令和4年度(2022年度)の診療報酬改定を受け、社会保障費の適正化など2025年問題に向けた医療体制の変革が実質的に進められています。2025年問題は、訪問看護業界にどう影響してくるのでしょうか。
そこで今回は、2025年問題を踏まえ国が求める医療と今後の方向性、そして訪問看護に求められる役割などを考えていきましょう。
目次
1.2025年問題とは
2.訪問看護への影響
3.2025年に向けて訪問看護が目指すべきこと
3-1.地域コミュニティと在宅ケアの整備
3-2.訪問看護サービスの向上
3-3.訪問看護師の増加・育成
4.これからの訪問看護にICT化
5.まとめ
2025年問題とは
2025年問題とは、2025年に団塊世代と呼ばれる年代全員が75歳以上の後期高齢者となり、日本人人口の高齢化率が高くなることで懸念される、様々な影響のことを指しています。
団塊の世代とは、1947年〜1949年の第1次ベビーブームに生まれ、日本人の人口の中で一番多い割合を占めています。
厚生労働省によると、2025年に75歳以上の高齢者人口は2,179万人で全人口の18.1%、65歳以上の人口を含めると3,657万人で、高齢者の割合が全体の30.3%になると報告しています。
また2055年には、1971年~1974年の第2次ベビーブームに生まれた世代も高齢化に入り、75歳以上の人口は26.1%、65歳以上では39.4%と全人口の約4割を占めると見込まれています。
参考)厚生労働省「今後の高齢者人口の見通し」
https://www.mhlw.go.jp/その中で懸念されている2025年問題の内容には、以下のようなものがあります。
・認知症高齢者の増加
・高齢の一人世帯または夫婦二人世帯の増加
・死亡者数の急増
・医療費/看護/介護費の増大とそれに伴う財源の確保、現役世代の負担
・医療・看護・介護業界の人手不足
高齢者の増加に対し、日本人の人口は2010年の1億2,800万人超をピークに年々減少しており、今後も減少が加速していくと考えられていることから、深刻な労働力不足に陥ると考えられています。
参考)総務省統計局「高齢者の人口」
https://www.stat.go.jp/訪問看護への影響
2025年問題は、高齢者を中心にケアを必要とする人々が増加するのに対し、財源や医療機関、ケア人材が追いついていないことが課題とされています。医療・看護・介護の需要と、社会保障費など供給のバランスをどのように維持していくかがポイントになってきます。
厚生労働省は「厚生労働白書」の中で、「人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える」として高齢者の労働意欲や健康への意識改革、地域包括ケアシステムの推進、介護保険制度の見直しなどの対策を盛り込んでいます。
地域包括ケアシステムの1つとして、活躍を期待されているのが訪問看護師です。
地域包括ケアシステムは、ケアを必要とする人が医療機関ではなく地域の協力を得ながら自宅で療養する仕組みづくりで、社会保障費の負担を軽減する狙いがあります。在宅ケアへシフトする流れの中で、医師の指示を受けケアできる専門家として訪問看護のニーズが高まっているのです。
一般社団法人全国訪問看護事業協会によると、指定訪問看護ステーションの数は2000年には4,730事業所、その後10年は微増に推移していましたが、2012年から年間約1,000単位で上昇し、2021年現在は1万3,003事業所まで増加しています。
参考)一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和3年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
https://www.zenhokan.or.jp/2025年に向けて訪問看護が目指すべきこと
超高齢化社会に入り、在宅ケアへのシフトとともに訪問看護の在り方を改めて見直す機会となりました。
ケアを必要とする人々にサービスを提供できる環境を整備するため、訪問看護が目指すべきこととして訪問看護の利用促進、ステーションの設置、訪問看護師の増員・教育など在宅ケアの基盤整備が積極的に進められています。
地域コミュニティと在宅ケアの整備
地域包括ケアシステムは、医療・看護・介護・介護予防・住まい、生活支援が一体的に提供される仕組みで、高齢者が可能な限り住み慣れた土地で自立した生活を送るためのサポートを行います。
その中で訪問看護は、24時間365日いつでも必要なときに質の高いサービスを提供する仕組みづくりが必要です。そのためには自治体や団体、各ステーション、サテライトの連携も図り、地域による偏差をなくしながら在宅ケアを充実させるための体制づくり、環境整備が重要になります。
訪問看護サービスの向上
訪問看護の利用者は多様化しているため、訪問看護・定期巡回・臨時対応だけに留まらず、日帰り・宿泊なども含めた「複合型サービス」、高齢者が地域で暮らし続けるためのサポートサービスの開発・実施などが求められます。
利用者も入院、または通院するよりも、自宅で療養したいと希望する人も多い傾向にあり、それぞれの症状や状況に合わせた適切なケアが必要になってくるでしょう。
訪問看護師の増加・育成
日本看護協会の調べによると、令和元年(2019年)の看護職員就業者数は168万3,295人、そのうち病院勤務は101万8,412人、訪問看護ステーション勤務は6万660人です。
日本看護協会では、訪問看護師を増やす試みとして「病院に所属しながら訪問看護師としても働ける制度」の検討、「ネットを活用した人材育成プログラムの作成」の実施が行われています。
人材育成プログラムは、新卒から訪問看護師として働くためのものです。これまで、実務経験のない新卒看護師には訪問看護という仕事は不向きであり不可能とされていました。
訪問看護では、患者が安心して療養できる環境を整えることが重要です。またがん末期患者、人工呼吸器・チューブ装着者など重度化した在宅療養患者、さらに小児科、精神科、認知症など扱う分野も広がっており、患者の多様化、複雑化に対応できる高度な人材を確保する必要があります。
そこで訪問看護入門プログラムを作成し、事業所の研修に活用したり、大学で訪問看護師コースを新設したりするなど、即戦力となる人材育成が行われています。
また、資格を持ちながら働いていない潜在看護師に「看護師など免許保持者の届出制度」を実施し、ナースセンターやハローワークなどで復帰の支援も行われています。
これからの訪問看護にICT化
2025年問題に向けて深刻な労働力不足を補うには、医療・看護業界のICT化とシステムインフラの整備が大きなカギとなります。
ICTとは、「Information and Communication Technology」の略で、情報通信を活用したシステムやツールのことで、業務効率化やコミュニケーション手段として訪問看護業界でも多く実践されています。
ICT活用により、サテライトを含む、複数の事業所の利用者データ、従業員データ、ステーションに必要な様々な管理業務を一元化できます。従業員の移動や利用者の入退院など、突発的なスケジュール調整も可能です。
また、地域内の医療機関、介護施設など他業種との情報共有、コミュニケーション手段として活用することもできます。
そして、訪問看護師が行う記録業務などを自動化または半自動化し、時間を短縮することができます。訪問看護に関わる煩雑な業務を効率化することで、利用者への訪問・ケアに集中しやすくなり、ケアの質向上や利用者の満足度につながります。
まとめ
日本人口の高齢化率に伴う2025年問題は、もう目前に迫っています。訪問看護師として増加する利用者とどう向き合うか、地域医療としてどのように協力し支えていくかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。
2025年問題については、訪問看護を推進する団体で構成された連携会議により「訪問看護アクションプラン2025」が策定されています。その内容をまとめた記事もありますので、ぜひ参考にしてみてください。
【訪問看護アクションプラン2025】地域包括ケアシステムでの訪問看護の役割
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