事業所が人材を雇う場合、雇用保険の加入手続きを行わなければなりません。複数人のスタッフを雇用する訪問看護ステーションも、例外ではありません。
そのため経営者は、雇用保険に対する正しい知識を身につけておく必要があります。そこで今回は、雇用保険とはどのようなものか、その概要と仕組み、加入に必要な書類、手続きの流れなどについて紹介していきます。
訪問看護ステーションの立ち上げ時はもちろん、スタッフを雇用する際にも都度必要となる手続きの1つなので、ぜひ参考にしてみてください。
1雇用保険とは
2失業保険との違い
3雇用保険の加入条件
4雇用保険の手続き方法
5これから訪問看護立ち上げの方はパーフェクトコース
6まとめ
雇用保険とは
雇用保険とは、労働者が失業または何らかの事情で離職した場合などに、再就職に向け一定期間安定して生活ができるようにサポートする公的な保険制度です。労働者を雇用する事業は、一部対象を除き原則として強制的に加入しなければなりません。
雇用保険では、失業給付金として教育訓練給付金、育児・介護休業給付金や高年齢雇用継続給付などの給付を行っています。
失業給付金とは、失業により突然収入をなくしても、失業期間中の生活費などのために、一定の金額を給付する制度です。給付期間は約3か月~1年間の範囲ですが、年齢や勤続年数、離職理由などによっても異なります。
これは再就職を促す目的もあります。就職活動で服装や交通費などの必要経費が発生しても、生活に困らないようにするためです。早期に再就職を決めた人には、「再就職手当」「就業手当」などの給付もあります。
教育訓練給付金とは、指定された教育訓練講座を受けるとき、必要経費の一部を負担するというものです。医療・社会福祉・保健衛生関連の資格には看護師、准看護師、保健師、助産師、介護福祉士、理学療法士なども含まれており、資格取得を目指すための講座や試験費用の一部を負担しています。
高年齢雇用継続給付は、条件を満たした一般被保険者に関して、60歳以降の賃金がそれまでの75%未満に低下した場合に適用されるもので、高齢者が安心して働ける環境をサポートしています。
雇用保険料率は、2022年に変更がありました。一般事業の場合、2022年4月1日~9月30日まで従業員の負担は0.3%、事業主の負担は0.65%です。2022年10月からは、従業員0.5%、事業主は0.85%が適用されます。実際に支払われる給付金については、退職前の6か月間の合計賃金から日割り計算して、そのうちの50~80%(60歳~64歳については45~80%)とされています。
失業保険との違い
「雇用保険」という名称は、給与明細などに記載されますが、会話などでは「失業保険」という言葉が使われることがあります。厳密にいうとこれらは同じものではなく、歴史の中で「失業保険」から「雇用保険」に変化していったのです。
失業保険の誕生は、第2次世界大戦終了後間もない1947年(昭和22年)です。失業した労働者に対し、国が責任を持って救済するという目的で「失業保険法」という法律が施行されました。その後改正が続くも、ビジネスが変化する中で離職者の発生などが問題になった背景もあり、1974年(昭和49年)に「雇用促進」や「失業予防」などの要素を盛り込んだ「雇用保険法」が誕生したのです。
失業保険は、失業者を守ることが目的でしたが、雇用保険は、失業者を守るだけでなく、失業者をなくす、雇用機会を増やすなど、労働者の福祉を増進することが目的となっています。
つまり、正しい名称は「雇用保険」なのですが、「失業保険」がベースになっているため、失業給付金などに対し現在でも同じ意味で使用されていると考えられます。
雇用保険の加入条件
雇用保険は、すべての労働者に当てはまるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。
・勤務開始日から最低31日間以上働く見込みがあること
・1週間当たりの労働時間が20時間以上であること
・学生でないこと(例外有)
これらに当てはまる雇用が正社員で、すべて雇用保険に加入することが義務づけられています。基本的に正社員は、試用期間中でも雇用保険に加入しなければなりません。以前は65歳未満を対象にしていましたが、2017年より年齢制限はなくなりました。
また正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣など雇用形態に関わらず、勤務状況によって上記の条件を満たす場合は、雇用保険に加入しなければなりません。雇用契約の期間が決まっていない場合、更新する可能性がある場合は、31日以上働く見込みがあるとして雇用保険の加入が適用されます。
更新の有無が記載されていない場合でも、実際に31日以上雇用が継続された実績があれば、雇用保険の対象となっています。
雇用保険の手続き方法
それでは、雇用保険に加入するための具体的な方法について説明していきましょう。
まず訪問看護ステーションを立ち上げ、新規に雇用保険に加入する事業所は、「労働保険関係成立届」を労働基準監督署に提出します。その後、以下の書類を用意し、事業所設置の翌日から10日以内に管轄のハローワークへ提出し、手続きを行いましょう。
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
・被保険者が持っている雇用保険被保険者証(なければ履歴書の写し)
・労働保険関係成立届の控え
・法人登記謄本(原本)または登記事項証明書
「雇用保険適用事業所設置届」は、事業所の名称や所在地、労働保険番号、年度の1日の平均従業員数など、雇用保険に加入する事業所の概要を示すものです。「雇用保険被保険者資格取得届」は、雇用保険の加入条件を満たした従業員がいる場合に提出するもので、1人につき1枚必要です。これらの書類はハローワークで入手するか、ハローワークのホームページからダウンロードすることができます。
「雇用保険被保険者証」は、雇用されたスタッフが前場で働いていた際に発行されます。新卒者など初めて働く場合は、一般的に履歴書を代用します。
「労働保険関係成立届」は労働基準監督署に提出したもののコピーに、交付後3か月以内の「法人登記謄本」を添付して提出します。
雇用保険の加入手続きは、スタッフ1人1人に行うものです。事業所が被保険者資格を有する労働者に対して、雇用保険の加入義務を怠った場合、懲役6か月以下もしくは30万円以下の罰金が科せられます。新規雇用や人事異動、出向などがあるたびに、加入手続きについて確認しておきましょう。
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雇用保険加入には提出する書類も多く、手続きも煩雑になりがちなため、これから訪問看護ステーションを立ち上げる際に不安を感じる人もいるのではないでしょうか。そこで訪問看護専用電子カルテ「iBow」では、訪問看護ステーションの立ち上げをサポートする「新規開業パーフェクトコース」を提供しています。
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まとめ
雇用保険は、労働者が何らかの事情で失業しても、当面の生活を維持していくために備えるもの、また再就職を支援するものです。事業所・事業者にとっては加入が義務であることはもちろんですが、スタッフの生活を守る意思表示でもあります。
ステーションの立ち上げには、雇用保険の大切さを理解するとともに、離職などを防ぐ労働環境への取り組みにも注力していきましょう。