従業員が勤務中にケガや病気になってしまった場合は、雇用主が労災保険で補償する義務があります。
労災保険は、事業主に加入と保険料の支払いが義務付けられている保険となるため、これから訪問看護ステーションを立ち上げたい方は労災保険の仕組みについて確認しておく必要があります。
そこで今回は、訪問看護における労働災害の基礎知識や、申請の仕方について解説します。訪問看護を立ち上げる際に便利なサポートについても紹介していますので、ご参照ください。
1労働災害とは
2労災の対象になるもの
2-1業務災害
2-2通勤災害
3訪問看護での労災
4申請までの流れ
4-1労災保険指定医療機関で診察を受ける
4-2請求書を手に入れる
4-3請求書に必要事項を記入する
4-4請求書と必要書類を労働基準監督署に提出する
5労災の注意点
5-1労災の申請手続きには期限がある
5-2労災と公的年金を併給する場合は調整される
5-3労災は労働基準監督署に報告の義務がある
6まとめ
労働災害とは
労働災害(労災)とは、労働者が業務時間内や通勤中に被ったケガや病気、死亡のことです。労働災害は一般的に、工事現場でのケガや危険な場所での転落事故などをイメージされることが多いですが、職場におけるパワハラ・セクハラ・過重労働に起因する「過労死」や「過労自殺」も労働災害と判断されることもあります。
事業主は、このような労災が発生してしまった場合は従業員に補償を行わなくてはいけないため、1人でも従業員を雇用した場合は必ず労働者災害補償保険(労災保険)への加入が義務付けられています。
従業員とは正社員だけでなく、アルバイトやパートの人も対象となっています。労災保険料は全額事業主負担であり、業務中の従業員の安全を確保することは事業主の義務ということになります。
労災の対象になるもの
労災の対象と認められた場合は、労災補償制度により労災保険から給付金が支給されます。労災には大きく分けて「業務災害」と「通勤災害」があります。それぞれどのようなものか、詳しく解説していきます。
業務災害
業務災害とは、業務中のケガ・病気・死亡のことを指します。労働基準法では、業務に従事していたために生じた災害(業務上疾病)に該当する場合は保証を行わなくてはならないと定められています。
業務災害として認められる要件には、「業務遂行性」と「業務起因性」があります。業務遂行性とは、災害が起こった時に会社の管理下にあることを言います。業務起因性とは、勤務時の行動が原因で起こった災害のことで、つまり仕事が原因で発生した災害を言います。
通勤災害
通勤災害は、職場と自宅の往復中に発生したケガ・病気・死亡が該当します。通勤災害として認められるにあたって重要なポイントは3つあります。
1つ目は、通勤中であるかどうかということです。例えば休日に、忘れ物を職場に取りに行く途中で発生した災害である場合は、就業とは関係なく通勤に該当しないため通勤災害とは認められません。
2つ目は、通勤経路を逸脱したり、通勤以外の行為で通勤を中断したりしていないということです。例えば、退勤後の飲み会のために通勤を逸脱・中断した場合は通勤災害とは認められません。ただし、通勤中に子どもを保育園に預ける、コンビニで昼食を購入するなどの日常的な行為については逸脱・中断とはなりません。
3つ目は、通勤経路が効率的なことです。通勤途中の災害だったとしても、あまりに遠回りするような経路である場合には、通勤中として認められません。ただし、当日の通勤事情によりやむを得ずう回した場合は正当な経路として認められます。
訪問看護での労災
訪問看護で発生しやすい労災には、以下のようなものがあげられます。
・感染症(新型コロナウイルス感染症を含む)
・腰痛、首、肩、手首の痛み
・消毒剤、薬物等によるアレルギー症状等
・利用者、上司からのハラスメントによる精神疾患
・時間外労働、オンコール、生命に直面することによる精神的ストレス
・ステーションと自宅間での通勤途中の事故
・利用者宅までの移動時の交通事故
そのため訪問看護ステーションの管理者は、これらの労災が発生してしまったときに速やかに対処できるように、近くの労災病院の場所を調べるなどの準備しておきましょう。
申請までの流れ
万が一労災が起こってしまった時に行う手続きは以下の通りです。
1.労災保険指定医療機関で診察を受ける
労災の対象となる病気やケガが発生してしまったら、まずは労災保険指定医療機関で診察を受けてもらいましょう。労災指定医療機関で治療を受ける場合は、治療費の自己負担はなく現物給付という方法になります。
もし労災指定医療機関が近くにない場合は、労災指定医療機関以外の病院を受診しても構いませんが、一度自己負担で支払いを行った後、後日請求手続きを行い医療費の還付を受けることとなります。
2.請求書を手に入れる
次に、労災申請の請求書を厚生労働省のホームページからダウンロードするか、所轄の労働基準監督署から手に入れます。労災の補償の種類によって請求書が異なるため、該当する請求書を用意するようにしましょう。
3.請求書に必要事項を記入する
請求書を手に入れたら必要事項を記入します。請求書には労災の発生状況に間違いがないかを証明するための署名欄があります。署名がなければ書類は無効となってしまうため、必ず署名するようにしましょう。
また、補償の種類によっては医療機関に記載してもらわなくてはいけない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
4.請求書と必要書類を労働基準監督署に提出する
請求書を記入したら、保証の種類によって異なる必要書類を添付し労働基準監督署に提出します。労働基準監督署は請求書の内容を確認し、職場や医療機関へ調査が行われ、労災に該当するかを判断します。調査の結果により労災と判断された場合には、給付が決定されます。
労災の注意点
労災を受ける時に注意すべき点について説明します。
1.労災の申請手続きには期限がある
労災の申請をする際には、補償内容によって手続きの期限が設けられています。
2年:療養補償給付・休業補償給付・葬祭給付・介護保障給付・二次健康診断等給付
5年:障害補償給付・遺族補償給付
これらの期限を越えてしまうと、給付および給付を受ける権利が無くなってしまうため、期限内に必ず手続きをしましょう。
2.労災と公的年金を併給する場合は調整される
労災の給付と公的年金の障害年金や遺族年金は一緒に受けることができますが、その場合、労災の給付額減少に繋がります。これは、給付金額の合計が労災発生前の賃金を上回らないようにするためです。
3.労災は労働基準監督署に報告の義務がある
労災が発生してしまった場合、事業主は労働基準監督署に報告する義務があります。報告を怠ったり、虚偽の報告を行ったりした場合は、刑事責任が問われるほか、業務上過失致死罪に問われてしまうことがあります。労災が発生してしまったら速やかに報告するようにしましょう。
まとめ
今回は、訪問看護における労災や申請方法について説明しました。訪問看護ステーションを立ち上げる際には労災保険の加入が必須となりますので、忘れずに加入しておきましょう。
また訪問看護ステーションの開業には、労災保険だけでなく損害賠償保険への加入も義務化されています。訪問看護師が安心して訪問できるように、ステーションにあった保険を選べると良いですね。損害賠償保険についてはこちらの記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
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