訪問看護では、病院や施設と異なり利用者の自宅が看護の現場となること、基本的には一人の看護師が訪問することなどから、セクハラをはじめとするさまざまなハラスメントが起こりやすい状況にあるといえます。
ハラスメントはスタッフの努力だけでは防ぐことが難しいため、万が一の事態に備えた対策が重要です。そこで今回は、訪問看護におけるセクハラへの対応について解説します。訪問看護に携わる人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1 訪問看護のハラスメントの実態
2【事前】訪問看護のセクハラ対応
2-1セクハラへの対策を公表する
2-2セクハラについての研修を行う
2-3相談しやすい雰囲気作り
2-4訪問の際は安全を考慮する
3【事中】訪問看護のセクハラ対応
3-1訪問スタッフは冷静な対応を行い、必要に応じて避難する
3-2管理者は訪問スタッフの安全を確保する
3-3報・連・相を行う
3-4記録を残す
4【事後】訪問看護のセクハラ対応
4-1被害者は状態に応じて受診の継続を
4-2被害者には十分な休養期間を設ける
4-3話し合いの場を設ける
4-4必要に応じて法的手段をとる
5 情報をきちんと管理しよう!訪問看護専用電子カルテ『iBow』
6 まとめ
訪問看護のハラスメントの実態
ハラスメントには、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、モラルハラスメントなどさまざまなものがあります。そのなかでも、訪問看護において発生しやすいのがセクシュアルハラスメント(以下セクハラ)です。
平成30年度に訪問看護ステーションおよび訪問看護師を対象として行われた調査によると、利用者やその家族から受けた暴力に関して、身体的暴力は45.1%、精神的暴力は52.7%、そしてセクハラは48.4%もの看護師が「経験あり」と回答しています。
参考)一般社団法人全国訪問看護事業協会「平成29年度・平成30年度全国訪問看護事業協会研究事業 訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業 報告書」
https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/h30-2.pdfハラスメントの被害に遭ったスタッフの中には、なかなか言い出せず一人で抱え込んでいる看護師もいるかもしれません。そのため、実際にはこの調査で明らかになった以上の件数のハラスメントが発生してしまっている可能性も考えられます。
このような辛い体験が、看護師をやめる理由になってしまっている可能性もあるかもしれません。
【事前】訪問看護のセクハラ対応
訪問看護事業所、訪問看護師にとっては、セクハラは決して他人事ではありません。いつでも発生し得るトラブルであると捉え、適切に対処するための方法を確認しておきましょう。
セクハラへの対策を公表する
事前に行える対策として、セクハラへの対策の公表があります。スタッフだけでなく、利用者やその家族に対しても、セクハラをはじめとするさまざまな暴力を決して許さないという姿勢をみせることが重要です。契約書や重要事項説明書などの重要書類に、ハラスメントに対する事業所全体としての対策を明記するなどして公表します。
セクハラについての研修を行う
セクハラをはじめとするハラスメントに関して研修を行い、スタッフが正しい知識や対処法を学ぶのも重要です。マニュアルの作成や内容の周知、事例検討などをとおして、全スタッフがハラスメントを自分のこととして捉え、日々の業務のなかで意識できるようにしましょう。
相談しやすい雰囲気作り
日頃からの雰囲気作りも大切です。万が一ハラスメントが発生してしまった際に、スタッフが一人で抱え込まず、周りのスタッフや管理者に相談しやすい関係作りを目指しましょう。発生したトラブルを個人の問題として捉えるのではなく、事業所全体の問題として解決する意識をもち、日頃から風通しのよい職場を作り上げられるのが理想です。
訪問の際は安全を考慮する
訪問は、安全を考慮して行いましょう。訪問看護では基本的に看護師は一人で訪問しますが、暴力のリスクがある場合には可能な限り複数名のスタッフで訪問するようにします。そうすることで、いざというときに適切な対処がしやすくなります。事前のアセスメントが重要です。
【事中】訪問看護のセクハラ対応
いざ自分の身にハラスメントが発生したら、気が動転してしまうことでしょう。しかし、冷静に、そして適切に対応することが重要です。
訪問スタッフは冷静な対応を行い、必要に応じて避難する
訪問スタッフは冷静な対応を心がけましょう。訪問看護においては、病院などのように他者の応援を呼ぶのが困難です。場合によってはその場を離れるのも難しい可能性がありますが、まずは自身の安全確保を第一に考えます。利用者や家族などから十分に距離を取り、それでも危険な場合には退室しましょう。
管理者は訪問スタッフの安全を確保する
被害を受けた訪問スタッフは、できるだけ早く管理者に報告しましょう。報告を受けた管理者は事実確認はもちろん、訪問スタッフに対して組織で対応することを伝え、心のケアに努める必要があります。
報・連・相を行う
続いて、関係各所への報告・連絡・相談を行います。訪問スタッフは、被害内容や期間などをできる限り詳しく管理者に報告します。必要に応じて、警察への通報や連絡も行いましょう。
記録に残す
ハラスメントへの対応では事実関係が重要になるため、記憶が新しいうちに詳細を記録に残しておきましょう。利用者の言動は事実をそのまま記録することが重要です。
【事後】訪問看護のセクハラ対応
セクハラでは、被害が発生したときだけでなく、事後の対応も重要です。
被害に遭ったスタッフは状態に応じて受診の継続を
被害に遭ったスタッフは、ケガや精神的な負担の状況をみて、必要時には受診しましょう。また、その後も継続した受診が必要であると判断された場合には、受診を継続しましょう。
被害者には十分な休養期間を設ける
セクハラをはじめとするハラスメントは、身体的・精神的ダメージが大きいものです。スタッフの中には、事件がトラウマとなり、恐怖心や不安感が強くなる人もいることでしょう。管理者は、被害に遭ったスタッフが心身ともに十分な休息を図れるよう配慮する必要があります。休みやシフトの調整を行いましょう。
話し合いの場を設ける
事実関係の整理ができたら、ハラスメント行為の当事者を交え、今後の訪問看護を安全に行うことを目的とした話し合いが必要となります。
今後の訪問に関して、複数スタッフによる訪問が妥当であると判断された場合には、複数訪問にかかる費用の加算について説明します。また、契約を中止する場合にはその旨を伝えましょう。当事者と複数名以上のスタッフとで話し合う場を設けられるのが理想ですが、被害に遭ったスタッフの出席が難しい場合には、管理者とそれ以外のスタッフが出席しましょう。
話し合いの際には、管理者はあくまでも中立的な立場で話をすすめることを意識しましょう。当事者を責め立てることはしてはなりません。
必要に応じて法的手段をとる
ハラスメント発生時には、被害者の安全確保が第一優先となります。ハラスメントの内容によっては、傷害罪や脅迫罪など処罰の対象となる場合もあるため、必要に応じて法的手段も検討しましょう。
情報をきちんと管理しよう!訪問看護専用電子カルテ『iBow』
ハラスメント発生時には、現場の状況を把握できるように記録を残すことが重要です。事実確認はもちろんのこと、法的手段を取る際にも資料として大変重要です。訪問看護専用電子カルテ『iBow』を活用すれば、タイムリーな記録作成が可能となるため、当事者の言動ややり取りに関して細かく記録に残せます。
また、『iBow』では訪問スタッフと管理者で速やかに情報の共有ができるため、ハラスメントのような緊急事態発生時の連絡ツールとしても活用できます。そのため、訪問看護の報・連・相において、多くの場面で活躍することでしょう。
まとめ
今回は、訪問看護におけるセクハラへの対応について解説しました。訪問看護では利用者の自宅が看護の提供の場となるため、セクハラをはじめとするハラスメントが発生しやすい状況にあります。訪問スタッフや管理者は、いつハラスメントが起きてもおかしくないという事実を常に認識し、万が一の事態に備えて日頃から対策しておきましょう。