訪問看護ステーションを立ち上げたい人のなかには、看護師としてのスキルや地域貢献への熱意はあっても、経営に関する不安や悩みで1歩踏み出せないという人もいるのではないでしょうか。
ステーションを運営するにあたり、経営に関する知識を身につけることは大切です。特にお金の動きについては、収支だけでなく支払う税金についても理解しておく必要があります。
訪問看護ステーションの場合、支払うのは所得税ではなく法人税です。今回は、法人税の概要と税率、訪問看護で法人格を取得することで得られる節税のメリットについて紹介します。
1法人税とは
2法人税の税率
3法人税を支払わない場合
4訪問看護で法人格にするメリット
5まとめ
法人税とは
法人税とは、法人事業の活動によって得られる所得に課せられる税金のことです。法人税は国税で、ほかにも地方税として法人住民税、法人事業税がありステーション設立時に登録した住所のある自治体に課税される税金になります。
法人税が課せられる法人形態は主に株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、有限会社、医療法人、NPO法人、協同組合などがあげられます。
法人税は収益から売上原価や販売費、災害などの損失費用を差し引いた合計金額のことで、そこから法人税が計算されます。
ただし、企業が算出した所得をそのまま計上して税額が算出されるわけではなく、税務調整というものが行われます。税務調整とは、企業の所得に対し法人税法の規定に基づいて加算・減算することです。
税務調整の対象となる経費には交際費、寄付金、減価償却費などが考えられます。たとえば法人税法において、中小企業の交際費の上限額は800万円と定められています。仮にその年の交際費が900万円となった場合、100万円分は交際費として計上することはできません。寄付金は、法人が寄付を行った場合一定額を損金として計算することができますが、内容や要件によって金額が異なります。
減価償却費も法人税法で金額の上限が定められており、一定金額以上のものは税務調整の対象となります。減価償却費とは、固定資産の購入費用のことで、経年劣化に合わせて金額を分割します。たとえば訪問看護ステーションで社用車を購入した場合、普通車であれば6年、軽自動車であれば4年となりその期間は定められた範囲内の金額を経費として計上できます。
法人税の税率
では実際に、法人税はどのくらい支払うものなのでしょうか。所得税の場合は累進課税のため1年間の所得が多いほど税率も大きくなりますが、法人税率の場合税率は一定です。ただし会社の規模や法人の種類、そしてそのときどきの財務状況や社会状況に応じて決定されています。
日本の税率は年々減少傾向で推移しており、平成元年は40%台であった法人税は10年後に30%台、さらに約10年後の現在は20%台です。
2022年の法人税率一覧は次の通りです。
普通法人(株式会社・合同会社・一般社団法人など)
| | 課税所得金額800万円以下 | 課税所得金額800万円超過分 |
|---|
| 資本金1億円未満 | 15.0% | 23.2% |
| 資本金1億円以上 | 23.2% | 23.2% |
公益法人(公益財団法人・公益社団法人・NPO法人または公益法人とみなされるもの)
| 事業から発生した所得金額800万円以下 | 事業から発生した所得金額800万円超過分 |
|---|
| 15.0% | 23.2% |
特定医療法人
| 事業から発生した所得金額800万円以下 | 事業から発生した所得金額800万円超過分 |
|---|
| 15.0% | 19.0% |
協同組合など
| 事業から発生した所得金額800万円以下 | 事業から発生した所得金額800万円超過分 |
|---|
| 15.0% | 19.0%(収入の要件によって変動あり) |
法人税のほかに法人事業税、法人住民税がありますが、法人事業税は所得に損金として計上することが可能です。そのため、実際の税率とは異なる場合があります。上記の表のように、法律で定められた基準を表面税率、事業税を加えて算出した基準を実効税率と呼び、実際の納付金額に近いとされています。
法人税を支払わない場合
法人設立に必要な定款を作成するとき、基本的に事業年度を定めます。法人税の確定申告・納付は定められた決算日(事業年度終了日)の翌日から2か月以内に行われなければなりません。
まず確定申告を期限内に行う必要があります。期限内に行わないと、追徴課税として本来の納付額より15~20%多い「無申告加算税」を支払わなければなりません。
次に、法人税を支払わないとどうなるのでしょうか。期限内に支払わない場合、期限切れから2か月以内は「年7.3%」または「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低いほうで、2か月を経過した場合は「年14.6%」または「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低いほうで計算された金額を支払うことになります。
ちなみに法人税を納付していても、税務調査で不正・改ざんなどが発覚した場合は納付額に35〜40%の重加算税が追加されます。
また、2期連続で期限切れ確定申告・納付を行うと青色申告は取り下げられてしまいます。青色申告の特徴である青色申告特別控除や、最長3年の赤字繰り越しなどさまざまな節税効果が得られなくなります。さらに赤字決算の場合は法人税がかかりませんが、確定申告は必要なうえ法人住民税の均等分割は課税の対象となるので注意しましょう。
訪問看護で法人格にするメリット
訪問看護事業は原則として法人格を取得する義務がありますが、法人格にすることで得られる節税のメリットもあります。その1つが株式会社などで役員報酬を設定できることです。
法人税の課税対象は「益金-損金」であり、所得金額が増えるほど所得税の割合は高く税金の負担額も大きくなります。株式会社の役員報酬は、損金として算入できるため会社の所得金額が低くなり、結果として法人税も少なくなります。金額の違いによっては大きな節税効果が期待できるでしょう。
ただし、役員報酬を増やせば法人所得税は少なくなりますが、個人の所得税は累進課税となるため収入が多いほど税金も高くなります。また高すぎる役員報酬は税務署で認められない可能性もあるため、業種や企業規模ごとに相場を調べておくとよいでしょう。
中小規模の多い訪問看護の場合は、役員報酬を経営者に設定するのが一般的です。会社設立当初は人件費を含め支出が多くなることが考えられるため、生活に必要な最低限の金額を設定するのがおすすめです。たとえば健康保険の第1等級である58,000円程度に設定しておくケースもあります。
もちろん、見込み収益なども異なるため金額の目安には違いがありますが、所得を抑えすぎることで赤字計算になってしまうことも考えられます。ステーションに対する周囲のイメージや銀行融資なども考慮し収益の黒字化を図ることも大切です。会社としての負担、役員としての負担のバランスを考えながら役員報酬を決めていきましょう。
また株式会社の法人格で、資本金1,000万円未満、設立後の年間売上が1,000万円未満の企業を対象に最大で2期(2年間)は消費税の支払いを免除する制度があります。設立当初は設備や人件費、システムへの投資等さまざまな出費が考えられるために配慮された制度です。
まとめ
法人税の実際の税率や計算方法は難しいため、専門家である税理士に依頼するのが一般的です。しかし経営者としてどのような税金があるのか、訪問看護ステーションの立ち上げに何%の法人税がかかるのかなどざっくりと計算できるよう仕組みを理解しておきましょう。
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