訪問看護ステーションから利用者宅への移動は、都市部では駐車スペースが限られているため自転車、地方では訪問先の距離が遠い傾向にあり自動車が多いとされています。徒歩や公共交通機関の利用もありますが、運転しながらの移動が一般的です。
いずれの場合も乗り物を運転する時は注意が必要ですが、どれほど慎重に運転しても事故が避けられないこともあります。その時、ステーションはどのように対処するべきでしょうか。
今回は、業務中に発生した交通事故責任の所在や事故発生時の対応、事故事例から学ぶ留意点などを紹介します。
1訪問看護における交通事故の責任の所在
1-1自動車が社用車の場合
1-2自動車が自家用車の場合
1-3社用車で交通違反をした場合
2訪問看護中に交通事故を起こした時の対応
3事故防止の留意点
3-1スケジュールは余裕を持って
3-2社用車はコンパクトなタイプを
3-3交通安全に対する意識向上
4情報共有に『iBow』
5まとめ
訪問看護における交通事故の責任の所在
事故が発生してしまったら、誰かが責任をとらなければなりません。「業務中のことだから」といってすべてステーション側が責任を負うわけではなく、自動車が社用車か自家用車かによって対処が変わります。事故事例をもとに説明します。
自動車が社用車の場合
自動車がステーションのもので、スタッフが事故を起こした場合、保険は社用車の自動車保険が適用されます。運転していたスタッフには不法行為による損害賠償責任がありますが、会社は使用者責任、運行供用者責任があるためどちらにも責任が発生します。
自動車が自家用車の場合
自動車がスタッフ個人のもので、業務中に本人が事故を起こした場合は責任者はスタッフ本人、保険も自家用車の自動車保険が適用されます。たとえステーション側が自家用車を使うように依頼した場合でも、スタッフ本人の合意のもと行われた行為とみなされます。
社用車で交通違反をした場合
自動車がステーションのもので、運転していたスタッフが駐車違反、スピード違反などをした場合、責任は運転者にあり本人が罰金を払うことになります。
交通違反は自転車の場合でも同様で、道路左側の路側帯以外での走行、逆走、信号無視などを行った場合は交通違反となります。
訪問看護中に交通事故を起こした時の対応
では、もし交通事故を起こした時はどのような対応をするべきでしょうか。道路交通法72条には、次の内容が示されています。
・直ちに運転を停止し、負債者を救護する
・道路の安全確保を行う
・警察に連絡する
まずケガ人がいる場合は救護し、必要に応じて救急車を呼びます。その後、事故車両を安全な場所に移動したり、停止表示板を設置したりなど路上での危険を防止する措置を行います。違反すると最大で10年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
次に警察への連絡です。人身事故はもちろん物損事故だけでも報告義務があり、違反すると3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金です。
事故を起こしたばかりの時は、全体が見えないため被害状況が判断できません。相手や自分にケガがないとしても、後からむち打ちや内出血などの症状が出る、車両の物損だけでなく積んでいた荷物や設備にも損害が発生する、といった可能性もあります。
そのため、たとえ相手が警察に連絡するほどのことではないといっても必ず連絡しましょう。
示談交渉には「交通事故証明書」「実況見分調書」が必要です。これは警察に報告しなければ作成されない書類で、交通事故が発生した日時や場所、事故の状況を説明するものです。これらをもとに保険会社は示談交渉に入ります。
自動車だけでなく、自転車も同様に「車」として扱われます。対人、対物、単独の事故でも、道路交通法上の義務に基づいてケガ人の救護、安全確保、警察への連絡(報告)を行いましょう。
警察に連絡したら、ステーションにもすぐに連絡を入れて状況を説明します。まだ訪問先が残っている場合はスケジュールの調整、保険会社への連絡などが必要です。
事故の相手が負傷した場合は、スタッフ自身や管理者がお見舞いに行くことも考えられますが、相手の都合や了承を得たうえで行います。示談交渉中は、保険会社に相談してから行動しましょう。
次に「介護事故報告書」を作成します。これは看護・介護の現場で発生した事故を報告するインシデントレポートです。提出先は行政で、情報を共有・分析することで再発防止に努めることを目的としています。
報告書の提出内容は主に介護中の転倒によるケガ、医療ミス、送迎中の事故による負傷、死亡などがあげられますが、法令違反や個人情報の流出なども対象になっています。ステーションのある市区町村に問い合わせて確認しましょう。
介護事故報告書はスタッフを守る意味でも重要で、万が一訴訟に発展した場合でも事実を証明する要素の一つとなります。報告書の記入例とひな形は、厚生労働省のホームページよりダウンロードできます。
参考)厚生労働省「 介護保険事業状況報告 様式案」
https://www.mhlw.go.jp/事故防止の留意点
交通事故は、スタッフや事故の相手だけでなくステーションにも大きな不利益になる可能性があります。健全なステーション運営のためにも、事故を起こさない対策が必要です。ステーション側でできるリスクマネジメントをいくつかあげていきましょう。
スケジュールは余裕を持って
時間がなくて慌ててしまうと、不注意な運転につながり事故を起こしやすくなります。そのため時間に余裕を持った訪問スケジュールを組むようにしましょう。スタッフの体調などにも配慮が必要です。
社用車はコンパクトなタイプを
多くの訪問看護では社用車を使います。社用車は慣れない場合もあるため、注意しながら運転できるようにスケジュールやコースに余裕を持たせましょう。都市部に限らず、住宅地は狭い場所もあることから社用車はコンパクトなタイプがおすすめです。
交通安全に対する意識を高める
最も大切なことは、ステーション全体で交通安全に対する意識を強く持ち業務に取り組んでもらうことです。
それぞれのステーションで、交通安全研修や運転教育、事故対応マニュアルの作成、見直しなどを行いましょう。特にヒヤリハットと事故では基準が曖昧になることも多く、その危険性を認識しないままにしておくと大きな事故につながります。
事故の場合は報告書の提出義務も発生するため、管理者などに相談・報告する体制も必要です。
日本看護協会では、事故防止・事故対応のポイントをわかりやすくまとめた「事故事例から学ぶ訪問看護の安全対策」を出版しているので参考にするとよいでしょう。
参考)日本看護協会「事故事例から学ぶ訪問看護の安全対策」
https://www.jnapc.co.jp/情報共有に『iBow』
就業規則や社用車利用規定、事故報告などを作成し、情報共有することも事故の抑制につながります。
しかし事務所にノートやファイルで保管しても目を通す時間がなく、認識不足や情報伝達の遅れで事故などの不利益が発生してしまう可能性があります。そこで便利なのが訪問看護専用電子カルテ『iBow』です。
『iBow』は日々の看護記録や帳票の作成が簡単に行えるシステムで、訪問記録以外にも就業ルールやマニュアル、電話対応、報告・連絡事項なども記録し、タイムリーにステーション内で共有することが可能です。重要な内容には「未読情報」として通知することができるため、メンバーの確認漏れを防ぎます。
情報をいつでも確認できることで、素早い対応、質の高いサービスの提供などにつながるのも魅力です。
まとめ
ステーションではスタッフに対し、交通ルールを守ること、余裕を持って業務に臨むこと、万が一事故を起こした場合の報告などを徹底するようにしましょう。
事故が起きてしまった場合、スタッフはパニックになっていることが多いため、ステーション側でも連絡を受けてからすぐ対処できるように備えておくことも大切です。情報共有や迅速な対応のために、ぜひ『iBow』を検討してみてはいかがでしょうか。