個人でも組織でも、成長するためには常に高い目標を掲げることが大切。訪問看護ステーションの経営やマネジメントに携わる人であれば、スタッフそれぞれの成長やモチベーション維持が事業に大きく関わってくることを体感する機会もあるでしょう。
そこで取り入れたいのが、ストレッチ目標です。ストレッチ目標は主に人材育成で活用され、設定した目標を達成し成果を上げれば、仕事へのやりがいや成長につながる可能性があります。
そこで今回は、ストレッチ目標の意味、ストレッチ目標を設定するメリット、そして設定方法について解説していきます。
目次
1.ストレッチ目標とは?
2.ストレッチ目標を設定するメリット
2-1.モチベーションアップ
2-2.スキルアップ
2-3.思考力・行動力が身につく
2-4.生産性の向上
3.ストレッチ目標の設定の仕方
3-1.スタッフの持つ能力を分析する
3-2.ストレッチ目標を立てる
3-3.実行中のフォローをする
4.設定する際の注意点
4-1.設定の難易度
4-2.個人目標と事業目標の適合性
4-3.フィードバック
5.まとめ
ストレッチ目標とは?
ストレッチは「限界まで伸ばす」という意味があり、ストレッチ目標は「背伸びをしてようやく届く」難易度の目標のことを言います。
これを、「伝説の経営者」とも呼ばれるアメリカの実業家で、ゼネラル・エレクトリック社のCEOを務めたジャック・ウェルチが、「手の届くところではなく、難しい位置に目標を設定することで、より大きな成果が生まれる」との考えから、従業員の人材育成に導入したものです。
それが実際に高い成果を上げたことから注目を集め、ビジネス界に広く浸透していきました。
ストレッチ目標は、現実的とは言えない高い目標ではなく、努力することでようやく到達できる難易度に設定するのがコツです。難易度は、能力の1.2~1.3倍が目安とされています。
ストレッチ目標を設定することで、スタッフがそれを達成するための方法を考え、実践と改善を繰り返すことに繋がり、しいては個人・組織の成長につなげていくことができるでしょう。
ストレッチ目標を設定するメリット
ストレッチ目標は設定するのも到達するのも簡単ではありませんが、達成することにより得られるメリットがあります。スタッフや事業にどのような影響を与え得るのか見ていきましょう。
モチベーションアップ
自分自身が難しいと感じているものを達成したときの喜びは大きく、自信がついて仕事そのものにやりがいを感じるでしょう。また与えられた仕事に受け身で対応するのではなく、自立的に目標へ取り組むことになり、モチベーションアップにつながります。
スキルアップ
高めの目標を設定することで、それまでのやり方を見直したり、考え方を変えてみたり、達成するまでに様々な創意工夫を行ったりといった試行錯誤が生じることもあるでしょう。
その成功に裏付けられた充実した体験は、さらにレベルアップしようとする、新しいことにチャレンジしようとする機会を創出し、結果としてスキルアップにつながることが期待できます。また得意分野を見つけることで、キャリアアップやキャリアパスなど、スタッフが将来的なビジョンを見出だせる機会も増えてくると考えられます。
思考力・行動力が身につく
目標を設定することで、いつまでに・何を・どのように行うかという具体的な計画や道筋が立てやすく、また行動しやすくなります。間違えたら別の計画を立て直す、達成したら次の目標にいくなど常に前向きにとらえ、前進する行動力が身につきやすくなると言えます。
生産性の向上
ストレッチ目標を達成し、スキルや知識をどんどん身につけていけば、能力は向上し、質の高いケアやサービスにつながります。また、モチベーションを維持できるスタッフが増えることで、事業所全体の士気が上がり、活気が出て離職率も低下する可能性があるでしょう。
特に訪問看護事業は人材が大きな資産ですから、事業のブランドイメージや業績に大きくプラスに働きます。
さらに、ストレッチ目標で得られた考え方ややり方、効果などはノウハウとして蓄積・活用し、それを事業所全体で共有することで、業務効率の改善、生産性の向上、成果を出せる事業運営などにつながります。
ストレッチ目標の設定の仕方
ストレッチ目標の設定は、高すぎると手が届かないために挫折しやすくなり、低すぎると成長しにくくなります。また、経営者や管理者から無理な目標の設定を押しつけられると、パワハラととらえられかねない恐れも出てきます。
そこで、まずは経営者としてスタッフに対しどのようにストレッチ目標を設定してもらえば良いか、具体的な考え方や組み立て方を理解していきましょう。
スタッフの持つ能力を分析する
まずはストレッチ目標の基準となるスキルを見極め、分析を行います。現在の能力が分からなければ、目標の難易度を設定することは困難であるからです。
スタッフ個人の能力はもちろん、性格や得意分野、趣味なども合わせて情報を収集しましょう。そのためにコミュニケーションをとったり、事務所や訪問先での態度などを把握したりすることも大切です。
ストレッチ目標を立てる
分析ができたら、スタッフと確認しながら実際に目標を設定します。できるだけスタッフの自主性を尊重し、経営者や管理者はスタッフの考えを具体化したり、難易度を調節したりといったサポートを行います。
目標の設定方法はいくつかありますが、最も基礎的なものとして「ベーシック法」があります。自分が起こすべきアクションを明確に組み立てることができるので、初めて目標設定する人にもお勧めです。ベーシック法では、以下の4つを軸に目標を考えます。
・目標項目(何を)
・達成基準の設定(どれくらい)
・期限の設定(いつまでに)
・達成までの計画(どのように行うか)
実行中のフォローをする
目標の設定が完了したら、スタッフがやるべきことを実行しているか進捗状況を随時確認しましょう。スタッフがなかなかうまくいかず悩んでいるときはフォローし、順調に進めていれば、ほめることも忘れないようにします。スタッフも評価がなければ、実行しなくなる可能性があるからです。
必要に応じて、目標の再設定やフィードバックを行って改善していきましょう。
設定する際の注意点
ストレッチ目標を設定しうまく効果を上げるためには、設定の際いくつか注意が必要です。経営者・管理者としてスタッフの目標をサポートできるように、ポイントを押さえておきましょう。
設定の難易度
ストレッチ目標は、「背伸びをして届く」範囲の目標です。スタッフの経験年数や業務などを考慮しながら、実現可能な目標を設定してもらいましょう。
例えば、看取りの経験を積みたいということであれば、医療処置だけでなく利用者や家族の人権、考え方に配慮したコミュニケーション、医師や病院との連携が重要になってきます。一連の業務プロセスの中で、自分のスキルレベルや行動を具体化し、達成するべき指標を明確にしていきます。
また、管理者を目指すのであれば、看護師としての能力はもちろん、リーダーシップなども求められます。事業所内でのコミュニケーションスキルを磨くためにできることなどを考えてもらいましょう。
個人目標と事業目標の適合性
ストレッチ目標の内容はスタッフによって異なりますが、それぞれの目標が最終的に事業所の目指す方針や理念に叶っている必要があります。個人のパフォーマンスを向上させながら、志を同じにして働くことで事業所全体の調和がとれ、どの利用者に対しても一貫性のあるサービスを提供することができます。
フィードバック
加えて、目標への行動に対するフィードバックが本人へ適切に行われるよう、仕組みづくりに努めることが重要です。人事評価だけでなくほかのスタッフから評価をもらえると、より客観的な意見を得やすくなると考えられます。
ただし、ストレッチ目標は難易度が高いため、うまくいかない場合はフィードバックもネガティブになる可能性があります。その評価に対してモチベーションが下がることも考えられるので、目標の見直し、再設定、話し合いなどフォローも大切です。
まとめ
ストレッチ目標は、目標を達成することよりも達成するまでの経験こそが自信につながり、スタッフを成長させてくれます。
特に訪問看護の仕事内容は多岐にわたり、あらゆる状況で判断を迫られることがあります。困難を乗り越える力を身につけるためにも、ストレッチ目標の重要性を認識しておきましょう。
訪問看護専用電子カルテ『iBow』のお役立ち情報では、看護師や経営者向けに役立つ記事を多数掲載しています。今回のストレッチ目標に関連して、目標設定や目標管理に関する具体的な方法について紹介している記事があるので、こちらも参考にしてみてください。
目標管理を訪問看護運営に取り入れよう!組織のために必須なマネジメント手法
https://ewellibow.jp/useful/information_20211022/