「従業員エンゲージメント」という言葉がビジネスで使われるようになっています。
訪問看護ステーションの経営においても、従業員が定着し、やりがいを感じてもらうために重要な考え方ですが、比較的新しいため「聞いたことがあるけれど、詳しい意味は良く分からない」という人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、従業員エンゲージメントとは何か、その歴史や必要性も含め紹介していきます。また、従業員エンゲージメントにつながる考え方や、理解しておきたいポイントについても解説していきます。
目次
1従業員エンゲージメントとは何か
2エンゲージメントの歴史
3「従業員エンゲージメント」を構成する3つの要素
3-1組織への理解度
3-2仲間への共感度
3-3業務への意欲
4従業員エンゲージメントを高めるコツは?
4-1労働環境と学びの提供
4-2円滑なコミュニケーション
4-3エンゲージメントサーベイ
5まとめ
従業員エンゲージメントとは何か
エンゲージメントとは、英語で「婚約」「約束」「契約」「雇用」といった意味がありますが、ビジネスで使われている意味としては「結びつき」などが当てはまります。
従業員エンゲージメントは、会社と従業員の間の結びつき、あるいはつながりを表し、従業員の会社に対する思いや誇り、貢献を示す考え方です。
明確な定義はありませんが、そこには「個人と組織が信頼関係を構築し、互いに成長しながら支え合う関係」をつくることが根本にあり、従業員が組織に対して愛着を持っていたり、熱意を持って仕事に取り組んでいたりする状態を示しています。
互いに協力し支え合う関係は、人材の定着、従業員のモチベーション向上、そして業績の向上などが期待できます。実際にエンゲージメントの高い組織では、業績が良好で従業員の離職率も低いという統計もあります。
参考)経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinzai_management/pdf/002_02_00.pdfエンゲージメントの歴史
エンゲージメントの考え方は、1990年代にアメリカで広がったとされています。もともと個人の主張が尊重され、人材の入れ替わりが多い傾向にあるアメリカの企業では、従業員をつなぎ止め、仕事への意欲を持たせることが課題でもありました。
一般的に、労働条件や給与などで従業員の満足度を向上させることは可能ですが、もしその従業員が現在の待遇より「良い条件の仕事」を探すことができれば、経営者が引き留めることは難しくなります。そこで、組織との関係を見直すために生まれた概念とされています。
日本でエンゲージメントが注目されるようになったのは、2000年以降になります。それ以前、高度経済成長期の日本は、「愛社精神」という考え方があり、1社に定年まで勤める人が多くを占めていました。
しかしリーマン・ショック発生から経済が不安定になり、終身雇用制度がうまく機能しなくなっていくと、愛社精神が揺らぎ始めます。その後もグローバリズムやテクノロジーの発展、労働人口の減少、働き方の多様化など様々な変化が起こり、労働者の就労観も変化していきました。
その一つの例として挙げられるのが、それまでの日本の企業文化にとらわれず、個人の価値観を重視した働き方を選ぶという傾向です。加えて、自分にとってメリットのある、またはやりがいのある仕事を求めて転職する人々も徐々に増え始めました。
その傾向は現在でも続いています。総務省によると、2000年以降転職者数は緩やかに増加し、2019年は過去最多の351万人、特に若年層に多い傾向にあります。理由は「より良い条件の仕事を探すため」が最多となり、転職に対する抵抗感は以前に増して下がっていると言えるでしょう。
参考)総務省「統計トピックス No.123 増加傾向が続く転職者の状況」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/topics/pdf/topics123.pdf企業が労働者を選ぶのではなく、労働者が企業を選ぶ時代に変化してきたことで、企業は人材の定着に力を入れるようになりました。
このような背景から、エンゲージメントという考え方が注目されるようになったと考えられています。
「従業員エンゲージメント」を構成する3つの要素
従業員エンゲージメントの軸となるのは、従業員と組織との精神的なつながりをつくることであり、その関係を構築するための要素が必要になります。それには次の3つが考えられます。
組織への理解度
組織への理解とは、訪問看護ステーションの掲げる経営ビジョン、企業方針、目標などを従業員と共感・共有することです。どのように利用者や家族と接していくのか、どのような事業にしていきたいのか、といった方向性を一致させることで、従業員の行動力強化にもつながります。
仲間への共感度
一緒に働く従業員との関係が良好に保たれ、一体感を持って働ける環境もエンゲージメントの重要な要素です。ケアに対する悩みを相談できる、難しい状況をフォローし合えるなど、お互いを尊重しながら支え合う職場であれば、従業員1人1人が安心して働くことができるでしょう。
業務への意欲
従業員のやる気を促すことも重要です。自分の力を発揮できる、または評価される職場であれば、充実感からポジティブな思いが生まれ、ステーションへの貢献度も高まると考えられます。それが利用者や地域にも反映されれば、ステーションの利益にもつながることが期待できます。
従業員エンゲージメントを高めるコツは?
従業員エンゲージメントは人事戦略、あるいは課題解決の一部といえるため、成功のカギを握るのが経営側からのアプローチです。どのようなことができるか見ていきましょう。
労働環境と学びの提供
まずは、給与、労働時間、有給休暇など、労働の成果を従業員に適切に還元します。訪問看護師として働く従業員の中には、家事や子育てに合わせて働きたい人もいれば、土日に働くことを希望する人もいることでしょう。ワークライフバランスを維持できる労働環境を提供することで、従業員満足度の向上が期待できます。
また社員に対する教育や研修などを実施し、従業員が学びと成長の得られる場をつくることも有効です。知識やスキルが身につくことで自信がつき、仕事へのやる気にもつながるでしょう。
円滑なコミュニケーション
労働環境を整えたら、心的なつながりを構築していくためにコミュニケーションを活発にしていきます。
日頃から従業員同士で情報を共有し、多様な価値観を認め、助け合う風土をつくっていきましょう。経営側も、理念や目標を確認するだけではなく、必要に応じてフィードバックやフォローアップ、メルマガなどの情報発信を行い、考え方や思いを伝えていきましょう。
エンゲージメントサーベイ
そして、エンゲージメントサーベイを実施します。エンゲージメントサーベイとは、エンゲージメントの要素である「組織への理解度」「仲間への共感度」「業務への意欲」などを測定する指標として用いられるものです。
組織と従業員の間のエンゲージメントスコアを数値化することで、現状を把握し、関係改善を行う目安になります。
これには、ステーション自らアンケートを作成したり、サーベイツールを利用したりする方法があります。前述した経済産業省の「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」では、エンゲージメントスコアを測定するための質問や、アプローチの方法などを解説しているので参考にしてみてください。
まとめ
厚生労働省によると、転職者がいる事業所の平均は35.7%、そのうち医療・福祉分野は45.3%と平均を上回ります。医療・介護分野は、専門性の高い職種であることから、即戦力のある経験者は条件の良い職場への転職も増える傾向にあります。
参考)厚生労働省「事業所調査・転職者の状況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-h27-1-01.pdf従業員エンゲージメントの意味するところは組織と従業員の結びつきであり、その思いはどちらか一方からのみ求められるものではなく、対等である必要があります。
少子化が進むほど、エンゲージメントによる人材の確保はさらに重要になってくることが予想されます。そのことを経営者は良く理解した上で、従業員との関係を構築していきましょう。
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