進行性核上性麻痺は、進行性の疾患で、訪問看護を必要とする人も少なくはないはずです。
今回は、進行性核上性麻痺について、その疾患の特徴や症状、原因、訪問看護におけるケア方法について解説します。
目次
1 進行性核上性麻痺とは
2 進行性核上性麻痺の原因
3 進行性核上性麻痺の症状
3-1 転びやすさ、歩行障害
3-2 パーキンソニズム
3-3 眼球運動障害
3-4 構音障害、嚥下障害
3-5 認知症
4 進行性核上性麻痺を患う利用者の看護方法
4-1 転倒予防
4-2 ADLの維持
4-3 誤嚥予防
4-4 褥瘡発生予防
4-5 便秘予防
4-6 コミュニケーション方法を工夫する
5 別表7・8に該当する疾患の管理には、『iBow』
6 まとめ
進行性核上性麻痺とは
進行性核上性麻痺は、パーキンソン病関連疾患の一つであり、脳の大脳基底核や脳幹などの神経細胞が減少・変性することによって麻痺を代表とする神経症状が起こる疾患です。
指定難病5として登録されており、厚生労働大臣が定める疾病等の「別表7」にも該当します。
動作緩慢や歩行障害など、パーキンソン病によく似た症状をみることがありますが、進行性核上性麻痺ではパーキンソン病治療薬が効きにくく、効いたとしても一時的であることが多く、進行がより早く進むという特徴があります。現在の医療では、治る可能性はなく、最終的には寝たきり状態になってしまいます。
進行性核上性麻痺の原因
進行性核上性麻痺は、脳の黒質や中脳、視床下核、淡蒼球(たんそうきゅう)、小脳歯状核などの部位において「タウ」という名称のタンパク質が変性し、脳内に貯まっていくことで起こります。
そのタンパク質が蓄積した部位の神経細胞が減少・脱落することで、さまざまな神経症状が現れます。
この疾患が起こる直接的な原因や生活習慣に関してはまだ明らかになっていません。
進行性核上性麻痺の症状
進行性核上性麻痺の主な症状について、順に解説します。
転びやすさ、歩行障害
進行性核上性麻痺に特徴的な症状の1つに、転びやすいという特徴があります。
この疾患では、発症後まもなくから転倒を繰り返すことが多く、姿勢の悪さやパーキンソニズム、そして認知症の症状の影響も受けて、とっさに手が出なかったり注意力が欠けたりしてしまうため、顔面や頭部にケガをしやすい転び方となってしまいます。
パーキンソニズム
進行性核上性麻痺では、すくみ足や小刻み歩行、動作緩慢などのパーキンソン病によく似た症状が出現します。
パーキンソン病との違いは、進行性核上性麻痺の初期段階では関節が動かしにくいという症状はないこと、四肢よりも頸部や体感に筋強剛(きんきょうごう)が出やすいこと、振戦はほぼ見られないことです。
頸部や体感が硬直していくことで、頸部は次第に後屈し、体がのけぞるような姿勢になっていってしまいます。
眼球運動障害
進行性核上性麻痺では、眼球にも運動障害が起こります。
初期の段階では眼球の上下運動が障害されるのみですが、病気が進行するにつれ水平方向の眼球運動も障害されるようになり、眼球の動きが全体的に障害されてしまいます。
さらに進行した状態では、眼球は正中位で固定されてしまいます。
構音障害、嚥下障害
進行性核上性麻痺では、進行につれて構音障害や嚥下障害がみられるようになります。
嚥下障害による誤嚥性肺炎がみられるようになれば、経鼻胃管や胃ろうからの経管栄養が必要になることもあります。
また、唾液の処理ができないほどの嚥下障害になってしまった場合には、気管切開などの処置が必要になることもあります。
認知症
進行性核上性麻痺発症後1~2年が経過すると、前頭葉の障害による認知症のような症状が現れることがあります。
進行性核上性麻痺では、動かない・話さないといった「動作の開始障害」、同じことを繰り返す「終了の障害」などがみられますが、アルツハイマー型認知症でみられるような見当識障害や記憶障害は軽度であることが特徴です。
進行性核上性麻痺を患う利用者の看護方法
ここからは、進行性核上性麻痺を患う利用者に対する訪問看護ケアについて、考えてみましょう。
転倒予防
進行性核上性麻痺では、初期の段階から転ぶことが多くなりますので、在宅生活においても転倒予防が重要です。
具体的には、以下のような対策を講じましょう。
・可能な限り、歩行時には介助者が付きそう。
・排泄は我慢せず早めにトイレへ向かうよう促す。
・手すりを持って歩行するよう促す。
・ゆっくり歩くよう促す。
・ベッドの高さは低くする。
・家具の角に保護剤をつける。
・保護帽子をかぶる。
・利用者の気を引く物を、目に見える範囲に置かない。
・上記の内容を家族に指導し、廊下や通路などは常に整理し障害物のないようにしてもらう。
住宅に手すりがなかったり段差があったりする場合には、必要に応じてリフォームをした方が、利用者が安全に暮らせることについて、家族に伝えていきましょう。
ADLの維持
進行性核上性麻痺はその名の通り進行性の疾患ですので、筋力維持や関節拘縮・廃用症候群の予防が重要です。
しかし、認知障害による判断力低下や危険察知能力低下がみられる場合には、無理してリハビリを進めることはかえって危険です。
理学療法士などリハビリの専門職の指示を仰ぎながら、利用者の状況に合わせてリハビリ方法を工夫しましょう。
誤嚥予防
進行性核上性麻痺の症状の中でも、命に直結する合併症を引き起こしやすいのが嚥下障害です。
よって、誤嚥予防は非常に重要な看護のポイントとなります。
進行性核上性麻痺による嚥下障害は、下方視障害や頸部後屈、脳機能低下による嚥下機能の調節障害、行動変化により一気に食べ物を口の中へ入れてしまうことなどによって起こりますので、以下の点に注意しましょう。
・食事は、椅子にしっかりと腰かけて、体をなるべくまっすぐにした状態でとる。
・食事中は気が散らないよう、テレビやラジオは消しておき、必要以上に話しかけない。
・食器の配置を工夫する。真下にお皿を置かない。
・一口が大きくならないよう、少しずつ食事摂取する。
・必要に応じて食事介助をおこなう。
・むせが見られる場合には、増粘剤(とろみ剤)を利用する。
・口腔内を清潔に保つ。
・上記の内容を家族に指導し、毎回の食事が安全にできるよう整えてもらう。
・むせが頻回になった、唾液が多くなったなど嚥下障害の症状の悪化が考えられる際には、すぐに看護師や医師に報告するよう指導する。
褥瘡発生予防
病気がある程度進んだ状態では、活動量が低下し、同一体位での生活が多くなることから、褥瘡発生のリスクが高まります。
訪問看護師としては、褥瘡予防の観点を忘れてはいけません。
訪問時には、全身を観察しましょう。特に褥瘡好発部位は念入りな観察が必要です。
便秘予防
進行性核上性麻痺では、活動量の低下や食事摂取量の低下などにとり、便秘になりやすいと考えられます。
こまめな水分摂取を促し、できる範囲で活動量を担保できるよう、利用者本人そして家族へ指導しましょう。
あまりに便秘がひどい場合には、医師に、便秘薬を処方してもらうことを検討してもよいでしょう。
コミュニケーション方法を工夫する
進行性核上性麻痺では、脳機能の低下や構音障害により、コミュニケーション能力が低下しやすくなります。
そのため、コミュニケーションの際には、利用者が理解しやすいよう分かりやすい言葉ではっきりと伝える工夫が必要不可欠です。
無言・無動状態になってしまっても、こちらの伝えることはある程度理解していることがあります。単に言葉が出にくいだけのこともあるため、時間をかけてコミュニケーションをとる必要があることを覚えておきましょう。
別表7・8に該当する疾患の管理には、『iBow』
訪問看護では、保険を適用できる条件として訪問回数や訪問時間が定められていますが、進行性核上性麻痺のような 「別表7」「別表8」に該当する疾患では、定められた回数や時間を超えた訪問看護の利用が許可されることがあります。
訪問看護専用電子カルテシステム『iBow』なら、別表7・8に該当する疾病や状態を一覧から探しチェックするだけで情報の登録ができ、さらにそれらに伴う加算なども自動で計算できます。
利用者の状態を正しく把握できるため、質の高い看護の提供にもつながります。
まとめ
今回は、訪問看護における進行性核上性麻痺のある利用者への看護方法について解説しました。
進行性核上性麻痺は、長い療養が必要となります。利用者が快適に暮らせるよう、訪問看護師としての支援をしていきましょう。
また、別表7・8に該当する疾患を抱えている利用者の電子カルテ管理には、『iBow』を活用し、適切な業務管理をおこないましょう。