訪問看護ステーションを立ち上げるには、原則として法人格が必要です。そのために悩むのが法人の種類ではないでしょうか。
法人を選ぶ際は、事業を行う目的や条件を把握する必要があります。この記事では、法人の意味とそれぞれの法人の役割をわかりやすく解説します。その上で自身が立ち上げる訪問看護ステーションの法人の選び方、補助金などを含めた法人格で受けられるメリットについても紹介します。
1営利法人と非営利法人の違い
1-1営利法人とは
1-2非営利法人とは
2訪問看護における法人の選び方と法人にするメリット
3法人の選び方で補助金が変わる
4まとめ
営利法人と非営利法人の違い
法人とは、「人(自然人)」と同じように主体的な存在として権利や義務を認められた組織・団体と定義されています。法人は法律に基づいて営利法人、公益法人(非営利法人)、中間法人(非営利法人)の3つに分けられます。
営利法人とは
営利法人はビジネスとして利益を得る経済活動を行うことです。株式会社、合同会社、合資会社、合名会社があります。
株式会社は株主が出資者となり、利益を株主や社員など特定の構成員に分配します。合同会社は社員が出資、分配し、合資会社や合名会社も同様に社員が出資しますが、責任の範囲など条件が異なります。なかでも合名会社は無限責任社員で構成されていることから、個人事業主や有限会社に近い存在です。
ただし各法人は個人事業主と違い会社の基本ルールをまとめた「定款」をはじめ、規定、法人登記の提出など多くの手続きが必要です。有限会社については、以前は法人格として存在していたものの、2005年の会社法成立により制度自体がなくなりました。
公益法人(非営利法人)とは
公益法人は、社会貢献を目的に活動を行うことです。非営利法人も営利法人と同じように利益をあげることができますが、共益活動を目的としているため利益の分配は禁止されています。ただしスタッフの雇用は行われており、給与が活動収益から経費として支払われています。
非営利法人にはNPO法人(特定非営利活動法人)、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人などがあります。
NPO法人は、NPO法に基づいて認証を受けた法人が実施主体となり契約、登記などの権利や義務を持っています。社団法人は一定基準の人の集まり、財団法人は一定基準の財産の集まりによって設立できる法人で、目的や事業内容は自由です。それが一般のものであるか、公益認定を受けたものであるかで種類が異なります。
社会福祉法人は、社会福祉事業が目的で特別養護老人ホームや児童養護施設、保育所、デイサービスなど活動はさまざまです。
医療法人は、人々の生命や健康に関わる活動であることから、医療法により非営利目的で設立することが定められています。社団・財団の条件はなくどちらでも設立が可能です。
公益法人にはほかにも包括宗教法人、単位宗教法人があります。
中間法人(非営利法人)とは
中間法人は営利・非営利の中間で、共同事業として出資や分配も行われますが、営利法人と異なり金額が大きく制限されています。協同組合、管理組合、互助会などがあります。
これら3つの法人に対し公益事業を行う公法人と呼ばれるものもあり、地方公共団体、独立行政法人、特殊法人などがあげられます。
訪問看護における法人の選び方と法人にするメリット
訪問看護ステーションの法人の種類はさまざまです。厚生労働省によると、令和2年時点で「営利法人(会社)」の割合は56.0%、「医療法人」が23.8%、「社団・財団法人」が7.2%、「社会福祉法人」6.0%、「地方公共団体」1.8%、「独立行政法人」1.7%。「協同組合」1.6%となっています。
参考)厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service20/index.html一番多い営利法人は、株式会社として運営するステーションが多いと考えられます。営利法人の特徴は、それぞれが独自の理念や強みを持ってサービスを提供していることです。
たとえば代表が看護師の場合は、それまでの臨床経験を生かして精神科や小児科、認知症ケア、ターミナルケアなど、代表が理学療法士の場合は訪問リハビリに重点を置いたケアなどそれぞれの得意分野を扱う傾向があります。ただし近年は、地域のニーズやスタッフのスキルなどに合わせて多様なサービス内容で提供しているところもあります。
また営利法人は医療介護分野だけでなく不動産、銀行、運送業、人材派遣など他職種が参入しているのも特徴です。このようなケースは、代表が経営手腕を発揮し専門スキルを持つスタッフがケアを行うという実施形態をとっています。
非営利で多いのは医療法人です。医療法人は病院・クリニックが運営するステーションが多く、主に入院前や退院後の在宅医療、自宅療養をサポートする機関として機能しています。母体が病院であるため、ターミナルケアや緩和ケアといった医療依存度の高い利用者を多く受け入れる傾向があります。
ほかにも一般財団法人は病院、社会福祉法人は養護老人ホームなどがありますが、これらの法人は医療から子育て支援、人材育成事業など扱う内容は地域によってさまざまです。地域に根ざした公益的な事業を行うものでは、協同組合なども考えられるでしょう。
訪問看護ステーションとは、利用者や地域の健康に関わる仕事で法人格の取得が定められています。営利・非営利どちらでも法人化できますが、法人化によるメリットもあります。
株式会社にすると、設立直後に国営の「日本政策金融公庫」から新創業融資を受けられる可能性があります。また会社設立費用も経費として計上することができるほか、設立後2年間は消費税が免除になり節税効果が期待できます。
事業継承では、名前を変更するだけで簡単に引き継ぎができます。資本金を小さく設定しておくことでさらに税金を抑えることが可能です。
注意点として、株式会社は役員報酬を設定できますが1年間は変更できません。また社会保険に加入する義務も発生します。保険の適用は求人においてメリットにつながりますが、金額は役員報酬の約20%になると言われており、運営には負担となり得ることも考慮しておきましょう。
法人の種類によっては、享受できるメリットが異なります。
たとえば合同会社は株式会社に比べてやや少ない資本金で設立できるものがメリットである一方、知名度が低いのがデメリットです。NPO法人や医療法人は社会的信用が高くなることが大きなメリットですが、利益目的ではないため分配がないことや行政への報告義務、業務範囲、経費などにさまざまな制限が設けられています。
法人の選び方で補助金が変わる
どの法人を選ぶかは設立時の人員や資本金・条件、事業規模によりますが、多くが営利法人として設立しています。営利法人になると、前述したように融資や税金対策がとれることに加え、必要に応じて補助金・助成金なども受けられます。
小規模事業の訪問看護ステーション向けには「小規模事業者持続化補助金」があります。この補助金は常時雇用者20人以下を対象としており、タイプは一般型・低感染リスク型の2種類です。広報費、委託・外注費、資料購入や事業拡大などさまざまな活動資金のサポートとして活用されています。2022年の支援枠は50万~200万円までとなっていました。
このような制度を利用することで、ステーション運営の立て直しや、新しい取り組みなどにチャレンジしやすくなります。ただし非営利法人、協同組合などは対象外なので注意しましょう。詳細の一覧はこちらで確認してください。
参考)「小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠>ホームページ」※2022年12月現在のもののため、随時ご確認ください。
https://www.jizokuka-post-corona.jp/まとめ
法人化はさまざまな種類があるため混乱しがちですが、自身が立ち上げるステーションの資本金や特徴、理念などを明確にすることで適切な法人を設立することができます。
とはいえ、訪問看護ステーションを一から立ち上げるため何が必要か、何を準備しなければならないか、集客の見込みはあるのかなど不安も多いことでしょう。
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